「ヒキ」について考えていること


今回の記事は「美希の天下創世」に直接関係のある話ではないかもしれません。
私こと姫路民の「暇つぶし的考察」と思っていただけるとよいと思います。
内容についてもそれほどオリジナル要素は無く、見聞きしたことを自分なりに、架空戦記と絡めて書いてみた、程度の内容になっていることかと思われます。
その点ご留意の上、お付き合いくださるとありがたいです。



・「ヒキ」について


もう一度「ヒキ」について説明しておきますと、これは、
「次回に気を持たせる」
手法のことです。



私が「ヒキ」について考える時、いつも頭に思い浮かぶのは「ドラえもん」の作中で、人気連載マンガとして登場した「ライオン仮面」。
作中で提示される情報としては、大体このような感じです。


――――――――――――――――――――――――――――――
正義の味方ライオン仮面が、悪の敵対組織に捕まってしまった!
処刑目前、絶体絶命!
窮地に立たされたライオン仮面の命運やいかに!?
(次号につづく!)

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……うん、ヒキの王道ですねw



「なんだ、そんなことか」
と思われる方もいるかもしれません。
それぐらい、この「ヒキ」というものはありふれた手法です。



最近見た「ヒキがおいしいなw」という動画を晒してみますと……







挙げるとキリがないので2つでやめておきます。



・「ヒキ」の重要性とは?


ありふれた手法と言えばそれまでです。
が、裏を返せばそれだけ「有効な手法」であるとも言えます。



何に有効なのかを私流に提言してしまうなら、
「人気」
です。
ニコニコ動画で言うなら、再生数やマイリスト数、といったことになるでしょうか。
(後述しますが、「面白さ」でないことに注意です)



私が「ヒキ」についての重要性についての記事を目にしたのは、週連載のマンガについてのことでした。
「『ヒキ』がないマンガは週連載ではやっていけない」
簡単に要約するとその内容はこうなります。



ご存知のように、週刊のマンガ雑誌という場では、毎週のアンケートで「人気がない」作品は容赦なく打ち切られます。
ですから、打ち切られない作品にするために「ヒキ」が駆使されたのでした。
これは想像ですが、やはり「続きが気になる」作品というものは、「期待票」を集めやすいんじゃないかなと思います。



iM@S架空戦記における「ヒキ」


さて、iM@S架空戦記において「ヒキ」がどう扱われているのかについて考えてみます。



その黎明期において、「ヒキ」というものはそれほど重要ではなかったかと記憶しています。
iM@S架空戦記は、そもそもの始まりがプレイ動画でした。
プレイ動画というものは、それ自体が「どうなっていくのかな?」と続きの気になるものです。
もちろん、プレイ動画にも「ヒキ」があるに越したことはありませんけど、週連載マンガで行われているようなえげつないヒキを使うまでも無かった、ということでしょう。



やがて、プレイ動画に紙芝居が加わるようになると、徐々に「ヒキ」の要素が増加していきます。
物語を作る上ではありふれた手法ですから、これは自然なことです。



しかし、それでもまだ「ヒキ」を主眼に添えて物語を作る、という傾向はありません。
強烈な「ヒキ」も確かにありましたが、あくまで物語を盛り上げるための演出、つまりは副次的なものであったと思います。
この時点においてもまだ、それほど「ヒキ」というものは重要な位置を占めるものではなかった、そう言えるかもしれません。



先述しましたが、「ヒキ」とは人気や再生数に影響するものです。
再生数が伸びないのなら多用されることもあったかもしれませんが、一視聴者として喜ばしいことに、iM@S架空戦記は質も量も再生数も伸び傾向にありました。
結果として「ヒキ」が重要視されることもなかったのだと思ってます(異論は認めますw)。



そのうち、iM@S架空戦記の面白さに惹かれ、多くのPが誕生してゆきました。
そうなると問題になってくるのが1本あたりの再生数です。
ニコニコ動画へ無限に視聴者が流入してくるというならともかく、実際はその数に限界があります。
iM@S架空戦記シリーズの視聴者についても同じことです。
人間1人あたりに使用できる余暇にも限りはありますから、必然的に1本の作品あたりの再生数は減少していくことになります。



「再生数は面白さとは関係ない」
と、私などは口を酸っぱくして物申します。
でも、大勢の方に視聴していただけると、製作者のモチベーションが上がりやすい。
それもまた動かしようの無い事実です。



さらに、紙芝居の面白さを抽出した「Novelsm@ster」という作品群が台頭し、再生数争いはますます激化していきました。
どんどん増える作品数。
そして、どんどん減少する1本あたりの再生数。
この状況をまったく気にせずに作品を作り続ける人は、賞賛に値する強靭な精神の持ち主だと言わざるを得ません。
誰でも「どうすれば再生数が増えるか」ということを考えたくなると思います。



そんな状況の中、近年架空戦記では「稀に見る」と言ってよい再生数をたたき出したシリーズが現れました。
それがおいしい「ヒキ」の例として紹介した「ぷよm@s」です。


・参考用 「ぷよm@s」第1話



「勝った! 第三部完!」
1話目からいきなりのこの展開ですよw



介党鱈Pが再生数を狙ってこの作品を作ったのだとは思いません。
しかし、結果としてこの再生数を稼ぎ出したことは偶然ではないと思っています。



iM@S架空戦記シリーズ、いや、Novelsm@sterでもPV作品でもそうなんですけど、総体的に言えば、クオリティーはずっと上がりっぱなしです。
じゃあ、「ぷよm@s」が過去類をみない超クオリティーな作品なのかと言えば、そんなことはないです。
少なくとも、ビジュアル的に「際立つ凄み」というものはありません。



特筆すべきはそのそのエンターテイメント性です。
とにかく見ていて楽しい。ワクワクする。
そしてなにより、
「続きが気になる……!」
あえて強弁させていただくなら、際立って「ヒキ」が強いのです。



週連載マンガの世界で何故「ヒキ」が重視されるのか。
それは、人気アンケートにおいて、読み切り作品がぶっちぎり最下位であることが多いからです。
まあ、普通は読み切り作品で「以下次号!」的な展開なんてできません。
そうなると、1本で話をまとめなくてはならないのですが、そういった作品は、絵が上手かろうが話が面白かろうが、連載中の不人気作品よりアンケート結果が悪くなるらしいです。
あらゆる「ヒキ」を駆使して読者を引き付けている作品群の中では、「次も見てみたい」という「期待票」は集められない、そういうことなのでしょう。



そろそろ、私の言いたいことも見えてきたのではないでしょうか。
現在においても、架空戦記やNovelsm@sterの新作は増加中です。
そして、架空戦記やNovelsm@sterの愛好家は、古参新参にかかわらず、お気に入りのシリーズの1本や2本は抱えこんでいることでしょう。
そんな状況下で新作を投下し、人気を博したいと思うのなら、「ヒキ」が弱い作品では難しいのです。



作品を作ったとしても、それがひとつの作品として1話で綺麗にまとまっていていたとしたらどうなるでしょうか。
「いい作品だな」
そう思ってもらえるとは思います。
では次回作を視聴してもらえるかどうか、そこは難しいところです。
時間が余っている視聴者の方であるなら、当然見てもらえるでしょう。
そうでないならば、よほどクオリティーに差が無い限りは、「続きを待ち望んでいる」既存のシリーズの視聴を優先するはずです。



「例え他の時間を削ってでも続きを見たくなる」
そんな作品作りをしないと再生数が伸びない、そういう時期に来ていると私は見ています。
要するに、これまで以上に「ヒキ」が重要視されてくるのではないか、ということです。
だからこそ、「ぷよm@s」がブレイクしたことは偶然ではないと考えているのです。



架空戦記に限って言うなら「アイドル達のジャンケン大会」あたりから始まった流れのような気もしますが、「ぷよm@s」が大ヒットしたことでその流れが加速するのではないかと思い、敢えてこっちを前面に出してみました。
さらに辿ると「fake story」まで戻らないとですし……w



・一応の参考リンク




・最後に一言 「ヒキ」の問題点について


さて、別にここで終わってもよいのですが、個人的に危惧していることがあります。



「ヒキ」のことを考えるとライオン仮面を思い出す、と最初の方に書きました。
それは、この作中劇に「ヒキ」の問題点も如実に表われているからです。



ドラえもん」作品中で、「ライオン仮面」の作者であるフニャ子フニャ夫氏は、絶体絶命に陥ったライオン仮面が生還する物語を全く考えていませんでした。
引くだけ引いておいて、続きを全く考えていなかったのです。
これは現実でも十分にありえる話でしょう。
というか、世の作者諸兄に配慮して「ありえる」としておきますw



つまり、
「物語を考えなくても『ヒキ』は作れる」
ということです。
これが横行すると、
「人気を取るためにとりあえず引っ張っておく」
そういうことに「なりかねません」。
ライオン仮面」では、ライオン仮面を助けるためにオシシ仮面なる新キャラが登場し、さらにオシシ仮面を助けるためにオカメ仮面なんてキャラまで登場しますが、物語としてはもう破綻しているとしか思えないです。
ギャグとしては笑えますがw



商業誌において人気は飯のタネですから、しょうがない部分はあります。
また、いくら2次創作だとは言っても、多くの人に楽しんでもらえることは喜びですから、架空戦記等でこういったことをどんどんやってもいいと思っています。



ただ、創作において重要なのは、
「自分が面白いと思うものを作る」
そして、
「自分が面白いと思ったものを、他人にも面白いと思ってもらう」
この2点だと思うのです。
私にとっては「ヒキ」というものはそのための技術の一つ。
あくまで作品を彩る枝葉の一枚です。
ですから、人気を取るために「ヒキ」を多用するという行為は、どうしても本末転倒に思えてしまうのです。



人によっては、
「人気取りこそ創作の意味!」
と考えておられる方もいるでしょう。
それを否定するつもりはありません。



ただ同様に、
「どんな『面白さ』を見せてくれるんだろう」
と期待しながら視聴している人もいるんだなと。
そのことを、心の片隅にでも記憶していただけると嬉しいと思います。





以上、長文になりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。